小さいイモネジの専門メーカーが無料サンプルを差し上げます  

イモネジとは、どんなネジ?

イモムシで~す

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イモネジとは、形状的には、頭部が無く、外側全部が ねじ状になっているネジです。 そうですね、あたかも イモムシ の様な形です。

イモムシネジ の ムシ が省略されて イモネジ となり、イモ が省略されて ムシネジ と呼ばれる様になりました。 (ちなみにこの論は、弊社技術顧問の推論ですのでアシカラズ…)

弊社の調査ではイモネジと呼ぶ人の方が多数派(65%)で、ムシネジと呼ぶ人は少数派(3%)ですね。 またイモネジと言う呼び方は、形状からの愛称・俗称であり、差別的な蔑称(べっしょう)ではありません。

すりわり付きイモネジのとがり先 イモネジとは、ねじを締め込んで行くと雌ねじ(穴)の中にネジが全部入ってしまう様な、頭部の無いねじの事で JIS規格での正式な名称は「止めねじ」です。

英語で止めねじは Set screw(セット・スクリュー)と言いますが、愛称(俗称)では Grub screw(グラブ・スクリュー)と言います。 Grubとは「地虫、カブトムシの幼虫」の事ですので、愛称(俗称)の発想が日本と同じなのは面白いですね。

英語圏では Set screw(Setscrew 含む)と呼ぶ人が47%、Grub screw と呼ぶ人が53%で、ほぼ同人数でした。(2021年1月18日に調査)

--- さて ---(前の所に戻る)

止めねじの使い方は、ねじの先端で相手を押して止める、その様な使い方をします。

バイトの止めねじ.jpg
    止めねじには、JIS規格に下記の3種類があります。
  1. すりわり付き止めねじ(JIS-B1117)
    (ねじを回すのは、マイナドライバーです)
  2. 六角穴付き止めねじ(JIS-B1177)
    (ねじを回すのは、六角ハンドル(六角レンチ)です)
  3. 四角止めねじ(JIS-B1118)(右の写真)
    (ねじを回すのは、四角い頭をスパナで回します)

上記3種類の止めねじの内でイモネジと呼ばれるのは、「すりわり付き止めねじ」と「六角穴付き止めねじ」の2種類です。

弊社がお勧めする、すりわり付きイモネジと、六角穴付きイモネジの選択基準は、

    2021年1月19日に弊社で調査した、日本での過去3か月間の結果 ---前の所に戻る---
  1. イモネジ・・・・・・・65%(いもねじ、芋ネジ等を含む)
  2. 止めネジ・・・・・・・18%(止めねじ、とめねじ等を含む)
  3. セットスクリュー・・・  8%(セットスクリュを含む)
  4. 虫ネジ・・・・・・・・  3%(虫ねじ、ムシネジ等を含む)
  5. 押しネジ・・・・・・・  2%(押しねじを含む)
  6. イモビス・・・・・・・  2%
  7. すりわり付き止めねじ・  2%

小さいネジのことを、ビスとも言いますので、イモビスと呼ぶ人が少数ですが居られます。イモビスって呼ぶ人は、ねじのプロっぽい感じがしませんか。

さてイモネジが消える日?って少しショッキングな表現ですが、我々は本当に心配なのです。 それは小径(M3以下)で短い全長のすりわり付き止めねじを製造するカム式自動旋盤の業界が、縮小しているからなのです。

その理由はイモネジを作る 機械が消える?であり、 イモネジを作る 工場が消える?なのです。 それらを、少し長くなりますがお話ししましょう。

 

イモネジを作る 機械が消える?

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弊社が創業した頃(1965年)よりも遥か昔は、色々なネジを切削加工で製造するのに手作業(ロクロ?)で製造していたらしいですが、 弊社が創業した頃には、カム式自動旋盤により自動で作られていました。

その頃、オネジのねじ部の加工はダイスと呼ばれる工具を使っていましたし、マイナスドライバーが入るすりわり溝も、 自動旋盤でツマミと言う治具とツマミ装置でフライスカッターを使い自動的に加工していました。 しかし、その様なスリワリ加工のできる自動旋盤を作る工作機械メーカーは、2004年現在で世界中を見渡しても有りません。 まさに「イモネジを作る 機械が消える」なのです。

自動旋盤にはその制御方法により、カム式自動旋盤とNC自動旋盤とがありますが、ここで言う「イモネジの製造機械」はカム式自動旋盤です。 弊社の場合、1個作るのに掛かる時間は早いものは1.7秒位です。右の動画のスタートから1分50秒辺りにその動きが映ります。

NC自動旋盤でも「すりわり付き」の「イモネジ」を作ることは可能ですが、1個作るのに掛かる時間がカム式自動旋盤の 2倍~3倍は掛かるでしょうから、コスト競争力に於いてはカム式自動旋盤の敵ではありません。

色々なタイプのカム式自動旋盤でオネジ(ダイス)加工や、メネジ(タップ)加工は可能ですが、 全ての機種でマイナスドライバー用の「すりわり加工」が出来るわけでは有りません。 弊社にあるのは野村精機のカム式自動旋盤ですので、野村精機の型番でお話します。

P-8の銘板 P-8 は、野村精機が創業して初めて作った自動旋盤です。 P-8 は弊社の創業者である斉田孝が24歳の頃に、野村精機の初代社長:野村孝之氏と共に設計した自動旋盤です。 弊社にある P-8 の銘板(右写真:クリックで大きく表示)に「製造 昭和35年 5月」の刻印が見えますし、「NO.192」の数字も読めます。 弊社創業者の斉田孝は昭和9年2月生まれですので、昭和35年は26歳でした。

創業者(斉田孝)から聞いた話では、自動旋盤メーカーとしては無名の「野村精機」では機械が売れないと言う事で、 最初に作った P-8 は富士精機の名前(FUJI SEIKI)を使わせて貰ったそうです。 弊社には FUJI SEIKI 銘(右下の写真)の、野村精機の P-8 が 9台あります。

FUJI SEIKIの銘板


昔(1970年代半ば頃まで)は、各工作機械メーカーは「すりわり付きねじ」を作るカム式自動旋盤を細々と作っていました。 ところが世の中の流れで、「すりわり付きねじ」は使われない方向へと進んで行きました。

「すりわり付きねじ」を使う組立ては、手間・コストが掛かります。 それで機器メーカーでは、「すりわり付きねじ」を使わずに「十字穴付きねじ」を使います。

そのような訳で「すりわり付きねじ」そのものが、随分と減って来ています。 ただし、今でも機械式腕時計の中には、頭部が鏡のようにキレイに磨かれた、美しいマイナスの「すりわり付きねじ」が使われていますね。

各工作機械メーカーは「すりわり付きねじ」を作るのに適したカム式自動旋盤を、1975年頃以降は生産していません。 「すりわり付きねじ」を作るカム式自動旋盤は、昔作られた古い機械だけです。ネジを作る工場では古いカム式自動旋盤を修理しながら使っています。

『作ったネジの単価は安いし、古いカム式自動旋盤の維持は大変で、とてもじゃないがやってられない』 それが、弊社以外で「すりわり付きねじ」を作っている工場の本音でしょう。

Photo

これは昔使っていた、
M1.4×P0.3用の
切削ダイスです。

しかも、大変なのは自動旋盤に関してだけでは無いんです。 カム式自動旋盤でネジを加工するのに、普通はダイスと言う切削工具を使いますが、これが又大変な代物なのです。 たまに、ねじ山の加工がされていないネジが出来るなど、きちんとしたねじ山が出来る様に調整するのが大変面倒なんです。

また、カム式自動旋盤でネジを加工すると、ダイスをホールドするダイス・ホルダーが高速回転(8,000rpm)して、 切削油のオイルミストが飛散して工場内に霞(かすみ)がかかり、環境を悪くします。

さらに、ダイスの材質であるダイス鋼は、比較的に磨耗が早く、取替え時期がひんぱんになります。 しかもダイス・メーカーではダイスそのものを作るのに手間が掛かるために作るのを嫌がり、結果的にダイスの価格が高くなります。 切削ダイスの代わりに転造ダイス(ローリング・ダイス)を使ったこともあるのですが、弊社では期待した結果は発揮できなかったです。

※ダイスについて詳しくはこちらをご覧下さい。

 

イモネジを作る 工場が消える?

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イモネジを切削で作る機械は、カム式自動旋盤です。NC自動旋盤ではコストパフォーマンスが悪すぎます。 カム式自動旋盤には、主軸移動型(ピーターマンタイプ/スイス型)と主軸固定型とが有りますが、 1975年頃から各自動旋盤メーカーでは、すり割り加工の出来る新しいカム式自動旋盤を製造していません。

そもそも各自動旋盤メーカーではNC自動旋盤の製造にシフトし、カム式自動旋盤は作らなくなりました。 確かではありませんが、自動旋盤メーカーではカム式自動旋盤の製造は2000年頃には受注(〇〇台以上)後の注文生産だった、と言う記憶が有ります。

カム式自動旋盤を使っている工場では、1970年頃に作られた自動旋盤を使い続けているのです。 24時間休みなく働き続ける自動旋盤は、回転部分や摺動部分が摩耗してガタが出てきます。 そのガタを修理する為には、普通旋盤・平面研削盤・円筒研削盤・ボール盤・縦型ミーリング、横型ミーリング 等の工作機械が必要ですし、その機械を使いこなす人と技術も必要です。 弊社ではそれら各種工作機械(写真付き)を設備しておりますので、よろしければご覧下さい。

しかし、カム式自動旋盤を使っている一般の工場では、それらの工作機械を持っていないのが現状です。 ガタの出てきた自動旋盤を騙しダマシ使うのには、職人の高度な腕が必要となりますが、 その様な高度な腕を持った職人は高齢となり、後に続く若い職人は中々現れません。

イモネジを作っている自動旋盤工場は、従業員が10人未満の小企業が多いのです。 社長さんも高齢になり、従業員の人たちも、それなりの高齢者です。つまり・・・

また、カム式自動旋盤工場では、経営者の後継者の問題があります。 社長の息子さんも、カム式自動旋盤工場では継ぐ気になりません。 従業員の若返りを図りたくても、今時の若い人に、この業界に入って腕を磨こうとする人は少ないのです。

そうです、イモネジを作るカム式自動旋盤の工場存続が危ぶまれているのです。

実は、これは今に始まったことではありません。1980年代には皆さん気が付いていた事です。 ですから経営者の方々は、カン・コツを必要とするカム式自動旋盤からNC自動旋盤へと、設備を切り替えて行ったのです。

2006年の9月に、スイスに住んでいる日本人の女性から連絡を頂きました。 この方のご主人は、スイスで自動旋盤の工場を経営しているスイス人です。 日本への帰省を兼ねて、ご主人は日本におけるカム式自動旋盤の状況を知りたいとの事で、 インターネットで日本の数社に見学の打診をした結果、弊社に連絡をして来られました。

その年の12月にお二人で弊社に来られた時、スイスでの状況をご主人に聞いた所(奥さんが通訳) スイスでもカム式自動旋盤は少なくなっていて、ご主人は危機感を覚えている、との事でした。 スイスは、ピーターマン社が世界で初めて主軸移動型の自動旋盤を作った発祥の地ですが、カム式からNCへの流れは世界的な潮流なのですね。 古いピーターマン型自動旋盤の写真と仕様が、シチズンの「自動盤歴史館」に載っています。

カム式からNCへ、の結果、日本国内にはカム式自動旋盤が少なくなり、その中でも すりわり付きねじを製造できるカム式自動旋盤は、さらに少なくなっています。 このままでは小さいイモネジが消えてしまう。

今後とも発展して行く「イモネジの製造工場」は無いのでしょうか?

 

イモネジが蘇(よみがえ)る日!

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Photo
これがネジ切り加工
する基本的なバイト
の形状です

ここまでいろいろお話してきましたが、結局、イモネジが消えてしまう原因を一言で言うと「ねじをダイス加工しているから」なのです。

ですから、カム式自動旋盤で、ねじ部をダイス加工なしで作る事が出来れば解決するのです。

NC自動旋盤と同じ様に、ネジ切りをバイトによる、チェーシング加工にするのです。 バイトの材質は超硬合金で、ダイスの材質であるダイス鋼よりも、はるかに硬くて磨耗しません。 そしてその耐磨耗性以外でも、チェーシング加工ならダイスの欠点が全て解決できるのです。

しかしそれは「言うは易し、行いは難し」です。 その様な中、斉田製作所にはカム式自動旋盤でチェーシング加工(バイトでのネジ切り)が出来る秘密が有るのです。

その秘密は斉田製作所の創業者:斉田孝に由来します。 詳しくは「小さいイモネジを作る機械」に書きましたので、よろしければご覧下さい。 チェーシング加工の詳しい事は「チェーシングによる、ネジ加工」をご参照ください。

それにしても儲かるのでしょうか? はい、儲かります。 いえ、儲かるようにします。

儲けないと次の世代に企業を存続させて行けませんし、小さいイモネジの供給責任を全う出来ませんから。 小さいイモネジを必要とされるお客様がいる限り、弊社は作り続けます。 その為にも弊社は儲けて、社員に還元して、会社を存続させなければなりません。

現場の要求による機械改造とコンピューター制御、そしてより良い加工方法の飽くなき追求が、斉田製作所の力の源泉となっております。 これで安い単価でも、儲かるのです。儲かるようにしているのです。

たゆまぬ研究・開発によって生まれたのが、小さいイモネジ「デルスクリュー・DELscrew」です。 斉田製作所では、今後もこの小さいイモネジにこだわり、製造を続けていきます。

ですから、皆様ご安心下さい。小さいイモネジはデルスクリューとして蘇(よみがえ)ったのです!

 

イモネジを、切削で作るとは?

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市販されているイモネジの多くは頭に六角の穴があいていて、そこに六角レンチを差し込んで回します。 これらは六角穴付き止めねじ、とかホーローセット・スクリュー(略して、ホーローセット、ホロセット等)と言います。

現在、六角穴付き止めねじを作るには、プレス加工(Wikipedia)と ローリング(転造)加工で作ります。これらは塑性(そせい)加工と言われる加工方法です。

外径が細い・小径のホーローセット(M1.6未満)になると、六角の穴も必然的に細くなります。 すると六角の穴と六角レンチの引っ掛かりが小さくなり、強く締め付けると六角穴や六角レンチがバカになります。 (小径のM2未満のホロセットになると、加工上から単価も高くなるようです)

そこで外径が細い、つまり小径のイモネジ(M1.6未満)は、ねじを回す部分を、すりわり溝にしてマイナスドライバーで回します。

鉄製の平先イモネジ JIS規格ではこの様なイモネジを、すりわり付き止めねじと言います。 すりわり溝とマイナスドライバーとは、しっかりと噛み合います。 ただし、すりわり溝も、マイナスドライバーの先も、しっかりとしたダレていない形状が前提です。

そしてイモネジの使い方としては、先端部で相手部材を押し付ける時には、イモネジ全体がメネジの中に入っています。

そこでマイナスドライバーで強く締めると、すりわり溝が広がる力が掛かりますが すりわり部の広がろうとする力をメネジの内径部が受け止めて、すりわり溝はバカにならない(舐めない)のです。

鉄製のとがり先イモネジ すりわり溝のことは「マイナス溝」とか単に「マイナス」とか言われます。 それに使うドライバーが「マイナス・ドライバー」です。 それに対して「十字穴」のことを「プラス」と言い、それに使うドライバーが「プラス・ドライバー」です。

プラスのネジで市中に多く出回っているのは、ほとんどが頭付きのねじです。 プラスのイモネジも市中に多少はありますが、JIS規格には存在しません。 プラスのネジは使い勝手が良いのですが、強く締める時にはドライバーが上に浮き上がる力が生じて「十字穴」が舐め易くなります。

すりわり付きのイモネジを作るのに一番適している加工は、カム式自動旋盤による切削加工です。 その加工方法の概略を下記に述べますと、

鉄製の丸先イモネジ
    カム式自動旋盤では長い材料(2.5M=250cm=2500mmほどの長さ)を、
  1. 先端(平先、とがり先、丸先など)をバイトで切削加工し、
  2. ねじ部(三角形のリード溝)を加工し、
  3. 突切りバイトで材料から切り落とし、
  4. 切り落ちる時に、ツマミで拾い上げ、
  5. ツマミ装置で、すりわり溝をフライス加工し、
  6. ツマミから排出します。

この様にカム式自動旋盤でのイモネジの加工では、先端の形状(平先、とがり先、丸先)加工と、 ねじ部の加工とがワンチャック加工されますので、 イモネジの先端部と、ねじ部との直角度や同軸度の精度が高いのです。 プレス加工とローリング(転造)加工では、ワンチャック加工とは言いません。

ただし、一般的なカム式自動旋盤では、ねじ部の加工は切削ダイスで加工しますので、 切削ダイスの食い付き方によっては、イモネジの先端部とねじ部との同軸度の精度が落ちる事があります。 弊社でも1986年まではねじ部の加工は全てがダイスで加工でしたので、ねじの品質維持に大変な苦労をしました。 もう二度と、あの頃には戻りたくありません。

現在、弊社の保有する マイコン制御のカム式自動旋盤では、 イモネジのねじ部の加工は NC自動旋盤と同様にバイトでのチェーシング加工ですでの、 ネジの先端部とねじ部との直角度や同軸度はバラツキが無く、精度が高くなりますし、 ねじの品質維持も切削ダイス加工より遥かに楽です。

バイトでのチェーシング加工ですと、ねじ有効径が規格よりも太いネジや、JIS規格には無いピッチのネジや、 ねじ山の数が1山とか2山のネジなどが、簡単に製作可能です。

 

バイトによる、チェーシング加工

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Photo
これがネジ切り加工
する基本的なバイト
の形状です

バイトとは金属を削る刃物の事で、刃の部分(チップ)の材質は硬い超硬合金です。 チェーシング加工するバイトは、ダイスよりも硬い超硬チップの先端を60°の三角形に成形したものです。

ダイスによるカム式自動旋盤での ねじ切り加工の場合は、ダイスを回転させながら材料に押し当てて 一度食付かせると、後は回転だけを与えればダイス自身でネジを切って進んで行きます。

所が、バイトによるチェーシング加工の場合には、バイト自身でネジを切って進んでいく機能は有りませんから、 材料が1回転する間にネジの 1リード分だけバイトを横(長手)方向に正確に動かす必要があります。
(リードとは、ねじが 1回転する時に進む距離で、1条ねじの場合はピッチと同じ)

ワシノの旋盤 これを普通旋盤(右写真:クリックで大きく表示)で考えますと、材料がユックリと回転をしている時に、 旋盤の送りねじ機構で、材料が1回転する間にバイトをネジの1リード分だけ横(長手)方向に送る事でネジ部を加工します。

主軸移動型の自動旋盤では、バイトは横(長手)方向に動かずに、材料が回転しながら横(長手)方向に動いて、ネジを加工します。

ネジを切削加工する上での、ダイス加工とチェーシング加工での違いの一つは、刃物の逃げ角の有無です。 M3以下のダイスには食付き部以外に逃げ角は ありませんので、ネジを加工している間にダイスの腹が 被削材のねじ部分に接触するので『ネジ部ムシレ』を生じ易いのです。

チェーシング加工するバイトには逃げ角を付けます。 逃げ角の大きさは、進み方向では大きくする必要があり、反対側では小さくします。 バイトには逃げ角がある事で、ねじを加工する時、バイトの切削する部分の腹が被削材のねじ部分に接触しないので『ネジ部ムシレ』を生じ難いのです。

進み方向の逃げ角の角度は、ねじの「谷部の直径」とねじの「リード」に依るリード角を計算して、それにプラスアルファします。 リード角の計算には tan-1(アーク・タンジェント)を使い、計算式 tan-1(リード÷谷部の円周) で求めます。

しかし、逃げ角があると言っても逃げ角磨耗が大きくなると、実質的には逃げ角が無くなりますので 『ネジ部ムシレ』は生じ易くなりますので、バイトの摩耗管理は大切です。

ダイスはダイス鋼を焼入れ・焼戻しの熱処理をしたもので、バイトは超硬チップを研磨成形したものです。 摩耗管理を考えた時、単純比較は難しいですが、ダイスよりも超硬チップを用いたバイトの方が50倍以上の耐摩耗性があります。

また品質上は、ねじの部分が一山も加工されていない『ネジ無し品』や、ねじが途中までしか加工されていない『不完全ネジ品』は、 カム式自動旋盤でのダイス加工の場合は、ダイスの食付きやネジ切りの深さ管理が不安定要素ですので、 『ネジ無し品』が出来たり『不完全ネジ品』出来たりして、安定的な品質維持が難しいです。

所が、バイトによるチェーシング加工の場合、ねじの部分が一山も加工されていない『ネジ無し品』は、 バイトの欠損によってのみ発生し、バイトの欠損は自動回復はしませんので、品質バラツキの要因とはなりません。 また、ねじが途中までしか加工されていない『不完全ネジ品』は発生しません。 つまり、バラツキのない安定した品質が確保できます。

このチェーシング加工では、ねじ部の長さが 1山のネジでも加工が可能です。 ただし、ねじ部の長さが 1山のネジは、イモネジではなく頭のある、平小ネジ(平ビス)や、 皿小ネジ(皿ビス)でないと、すりわり加工が出来ません。

イモネジではネジの外径部分が、すりわり加工をする上で最少 2山は必要です。

    チェーシングの英語は chasing で、英辞郎 on the WEB では下記の意味があるそうです。
  1. 追跡、追いかけっこ
  2. 彫金浮き彫り

 

切削ダイスとは?

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ネジを「切削ダイス」で作る時について述べます。

弊社でも、昔(1988年頃まで)は「切削ダイス」を使っていました。「切削ダイス」の事を普通は「切削」を省いて、我々は単に「ダイス」と言います。 以下で「ダイス」とは、「切削ダイス」の事を表します。

ネジの呼び径(太さ)により、M1、M1.2、M1.4、M1.6、M2 等のダイスを使い分けます。 同じ呼び径でもピッチが違えば、ダイスも異なります。例えば、M2×P0.4(並目ピッチ0.4mm)とM2×P0.25(細目ピッチ0.25mm)のように使い分けます。 (M がねじの呼び径、P がねじのピッチです)

ダイスはダイス鋼と言う特別な材料で作り、焼入れ焼戻しを行い、鉄やステンレスよりも硬くします。 ダイスはダイスメーカー(例えばヤマワ等)が製作しています。(超硬ダイスも有りますが、非常に高価です)

だいぶ以前(1985年頃)にオーエスジー株式会社(OSG)の技術者が 『切削ダイスを作るのは手間が掛かる割に価格が安くて、もう切削ダイスは作りたくない。これからは、転造ダイスの時代です。』 と言っていたのですが、現在、オーエスジー株式会社(OSG)は自動旋盤用のダイスは製造していません。

昔(1970年~1985年頃)弊社でダイスを使って、M1.7×P0.2(細目)とM2×P0.25(細目)の真鍮製のネジを作っていた時、 三角形のネジ山の頂上から三分の一位まで、ネジ山の上が丸く削られた不良が頻発しました。

この原因は、ダイスの谷に材料の真鍮が溶着して、その溶着した真鍮により三角形のネジ山の上が削られるのが原因でした。 ダイスの谷に溶着した真鍮は、尖った針の先でつついても容易には取れなかったです。 その時は、銅の配合比率の多い材料を使い、またダイスの後ろから切削油を強く吹き出し、何とか凌ぎましたが、それでも 100%の品質維持は難しかったものです。

Photo

これは昔使っていた、
M1.4×P0.3用の
切削ダイスです。

さらに昔(1967年~1976年頃)に弊社でダイスを使って、マルマンのガスライターに使われるM1.4の快削鋼のネジを作っていた時、 5万個位作るとネジ山の上が欠ける不良品が頻発しました。 原因はダイスの切れ刃が、へたって(摩耗して)きたからです。 ステンレスのネジをダイスで作ると、もっと悲惨です。1万個も作らないうちに、ダイスの切れ刃が、へたって(摩耗して)来ます。

またダイスでネジを作る場合はダイスの食い付き(切り始め)の為に、ネジの最初の2山位までは、ねじ山の形状が崩れる場合が多いのです。

ねじ山の品質管理上、ダイス交換のタイミングには大変気を使います。

右上の写真のダイスはソリッド・ダイスと言って、出来上がるネジの外径寸法は決まるのですが、 更に昔のダイスは一部が割れていて、そこにクサビを打ち込んでネジの外径寸法を調整しました。

ダイスを製作・販売する側は『ダイスは安い』と言いますが、使う側ではダイス代もさる事ながら維持の手間も含めて、『とても高いもの』になってしまうのです。

そのような訳で、一般的なネジを量産するのには、切削ではなく転造が有利なのです。ただ、転造の場合は「すりわり付き止めねじ」を作るのは苦手です。 転造の特徴であるコスト競争力も発揮されません。 特に外径と同じ位の短い全長のイモネジは、ネジ部の転造加工が非常に難しいです。

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