次にその詳しい特長をお話しします。
★ チェーシング加工の一つ目の特長 としては、JIS規格にないピッチやリードも簡単に加工・製作が可能なことです。
- ピッチとは、隣り合った山と山との距離です。
- リードとは、ネジを 1回転した時に進む距離です。 (1条ネジの場合は ピッチ=リード です。) (2条ネジの場合は ピッチ×2=リード です。) (3条ネジの場合は ピッチ×3=リード です。)
また、JIS規格(60度)にないネジ山角度(50度、55度、90度、等)も自由に製作可能です。 弊社のマイコン制御のカム式自動旋盤ではチェーシング加工でネジ加工しますので、カム式自動旋盤での真鍮製リードスクリューの加工・製作も可能なのです。 小さい真鍮製のリードスクリューでしたら、NC自動盤より低価格で製造できます。 また、一条ねじ( 1条ネジ)のリードスクリューだけでは無く、二条ねじ( 2条ネジ)のリードスクリュー、三条ねじ( 3条ネジ)のリードスクリュー等の多条ネジも加工・製作が可能です。
★ チェーシング加工の二つ目の特長 としては、JIS規格外ねじ外径、規格外ねじ有効径、規格外ねじ谷径、と自由な太さの規格外ねじ製作が可能なことです。 ねじ呼び径の、M0.8( S0.8)や M0.6( S0.6)も製造実績があります。 ちなみに、ミニチュアねじJIS B0201の、S0.8のピッチは 0.2mmで、S0.6のピッチは 0.15mmです。 また、この規格で一番細い呼び径 S0.3のピッチは 0.08mmですが、これもテストとして真鍮材で平小ネジを製造した事があります。 また外径が 2mmより細い、細物のリードスクリュー等も得意分野です。
★ チェーシング加工の三つ目の特長 としては、不完全ネジ部を 1山以内に出来ることです。ネジの奥に逃げ溝を作る場合でも、溝幅は 1山で十分です。 ダイスでのネジ加工では、ダイスの切れ刃は通常 1.5山~ 2山ですので、不完全ネジ部を 1山以内にするのは難しいのです。
★ チェーシング加工の四つ目の特長 としては、ネジ切りバイトの材質に超硬合金を使いますので、ダイス(ダイス鋼を熱処理した)に比べて工具の磨耗が少ないことです。 磨耗が少ないと、ねじ外径や、ねじ有効径の寸法変化も少ないので高精度なネジ加工が出来ますし、ネジ加工工具の交換の手間も減りますので、低コスト(安い単価)に結び付きます。
以上四つの特長が有るのですが、弊社の「マイコン制御のカム式自動旋盤」は、小さくて剛性のない自動旋盤ですので、一般のネジやリードスクリュー等の材質は非鉄金属が得意で、その中でも真鍮が最も得意な材質です。 しかし単純な小さいネジ( M3以下)ならば、快削鋼(SUM24L)や快削ステンレス(SUS303相当)でも製造可能です。
ネジ加工バイトの成形・研磨は自社で行っておりますので、ねじ山角度が 60度だけではなく、55度ねじ山や、90度ねじ山等も簡単に製作可能です。
ただし、ドライバー(ねじ回し)で回す所の形状は、自動旋盤による切削加工ですので、フライスカッターによるマイナス溝(-、すりわり、すり割り、スリワリ)のみです。 プラス溝(+)や、六角穴は、塑性加工(ヘッダー加工)で作りますので、弊社での切削加工では加工できません。
小さい「精密機器用すりわり付き小ねじ」(平小ねじ・皿小ねじ等)や、お客様で独自に設計された小さいネジ部品(ねじ部品)などの受注生産も承っております。
製作数量は、例えば 1個からでもOKですし、100万個以上でもOKです。 ただし 1個だけ製造するのは、単価がとても高くなりますので、 2個/ 5個/ 10個/ 100個等とお客様が将来必要になるであろう数量をお聞きして、数量別にお見積もりを致します。
弊社でも昭和 62年(1987年)頃までは、カム式自動旋盤でのダイスによる切削ネジ加工を行っておりました。 その頃の品質維持に対する苦労を思うと、今は隔世の感があります。 ダイスの切削刃部にキチンと切削油を掛けないと、ダイスが直ぐに磨耗したり、ネジの外径部がダイスに溶着して、ネジ外径が細くなったりしました。 また、高速回転をするダイスが切削油の油煙を巻き上げて、工場の中が霞んで見えました。 あんな大変な思いをしたダイスによるネジ加工に戻れと言われたら、廃業した方がマシですね。
何よりも、ダイスによる切削ねじ加工では、品質においても価格においても、国内他社や外国企業との競争において、今の時代では勝てず切削ねじ加工の専門業者として、生き残っていくのが難しいのです。
ところがバイトによるチェーシング加工は、弊社以外の自動旋盤屋では、NC自動盤では加工出来ますが、カム式自動盤では加工出来ません。 ダイスによる切削ネジ加工をしているカム式自動盤屋さんでは、現在、そして将来に難しいものを抱えていると思います。
弊社はまた、『小さい切削部品の専門メーカー』として、小さい挽き物(ひきもの)の受注生産も行っています。